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気候変動への対応
当社グループでは、国内及び中国に原薬・製剤の製造工場を有しています。今後も生産拡大を図っていく方針ですが、昨今の気候変動問題の深刻化に伴い、各国でのGHG排出規制の強化等が想定されるため、GHG排出量の削減や省エネルギー対応の強化が必要であると考えています。2021年より、網羅性・適切性を踏まえた当社グループ全体での「GHG排出量、エネルギー使用量」の集計体制の構築を進めてきており、2023年5月期からはScope3排出量(サプライチェーン上のGHG間接排出量)の算定も開始しました。今後、長期的な目標を策定し、GHG排出量削減の取組みを強化していく方針です。
[ 2024年5月期の取組み内容 ]
(1) 省エネルギー・GHG排出量削減への主な取組み(2024年5月期実績)
国内外での事業の拡大に伴い、エネルギー使用量及びGHG排出量が増加傾向にあります。これらの増加を少しでも抑え、将来の削減に繋げられるよう、2024年5月期は以下のような取組みを行いました。
- *高効率チラーへの更新
- *エアコン増設による冷温水発生機の廃止(都市ガスから電気へのエネルギー転換)
- *第三製剤棟の受変電設備の更新
- *空調設備の室外機への冷却水噴霧による電力使用量の削減
- *太陽光パネルの追加設置(第十製剤棟屋上)
(2) Scope1、2排出量の算定(連結)
従来の算定方法に従い、2024年5月期においても、連結グループでの「エネルギー使用量」と「GHG排出量(Scope1及びScope2)」を算定しています。2021年5月期以降の実績の推移は、下記のグラフに示すとおりです。
エネルギー使用量の推移(GJ)
集計概要
- 算定方法:
- エネルギー使用量:電気購入量と燃料使用量の合計(熱量換算)
- 熱量換算係数は「エネルギー使用の合理化に関する法律施行規則」による。
- 集計範囲:
グラフの項目名に「(単体)」の表記があるものはダイト単体。「(連結)」の表記があるものはダイト単体と連結子会社の合計。 - 集計期間:4月~3月
GHG排出量の推移(t-CO2)
集計概要
- 算定方法:
- Scope1:化石燃料等の使用による事業所からの直接排出(2021年5月期よりフロン類含む)
- Scope2:外部から購入した電気の使用による間接排出
- 排出係数:電気:(国内)温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度の電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)の調整後排出係数を使用
(海外)現地調査結果に基づく排出係数を使用電気以外:環境省・経済産業省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」による。(2024年5月期はVer.5.0)
- 集計範囲:
グラフの項目名に「(単体)」の表記があるものはダイト単体。「(連結)」の表記があるものはダイト単体と連結子会社の合計。 - 集計期間:4月~3月
(3) Scope3排出量の算定(ダイト単体)
昨今、企業自らのGHG排出量の削減のみならず、事業活動を行う上での調達、製造、販売、廃棄といった一連のサプライチェーン全体を通じたGHG排出量の削減を求める動きが強まっていると認識しています。
こうした中で、当社では、サプライチェーン上の間接的なGHG排出量を表すScope3の15のカテゴリにつき、算定対象カテゴリの特定と算定方針の決定を行い、2023年5月期以降、ダイト単体に関してScope3排出量の算定を行っています。
2024年5月期の算定結果及びカテゴリ別の算定基準は、下表に示すとおりです。
Scope3排出量(2024年5月期 ダイト単体)
カテゴリ | GHG排出量(t-CO2) | 割合(%) |
---|---|---|
1 購入した製品・サービス | 107,599 | 74.0 |
2 資本財 | 29,395 | 20.2 |
3 Scope1、2に含まれない |
3,745 | 2.6 |
5 事業から出る廃棄物 | 4,426 | 3.0 |
6 出張 | 194 | 0.1 |
7 雇用者の通勤 | 95 | 0.1 |
合計: | 145,454 | 100.0 |
カテゴリ別の算定基準
カテゴリ | 算定方法 及び 排出原単位 |
---|---|
1 購入した製品・サービス | 算定対象範囲はダイト株式会社単体のみとして、年間購入額上位90%のサプライヤーから調達した原材料について算出
〔算定式〕: Σ{(購入・取得した製品またはサービスの物量または金額データ × 排出原単位)} 排出原単位(物量)は、「IDEAv2.3(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」に基づく値を採用 排出原単位(金額)は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.4 2024年3月」に基づく値を採用 |
2 資本財 | 建設・製造が終了した資本財の価格に、価格当たり排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.4 2024年3月」に基づく値を採用 |
3 Scope1、2に含まれない |
電力、都市ガス、LPGの使用量に排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.4 2024年3月」に基づく値を採用 |
5 事業から出る廃棄物 | 廃棄物の種類・処理方法別の排出量に、排出原単位(廃棄物輸送段階含む)を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.4 2024年3月」に基づく値を採用 |
6 出張 | 移動手段別の交通費支給額に排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.4 2024年3月」に基づく値を採用 |
7 雇用者の通勤 | 移動手段別に算出した排出量の合計。移動手段別の排出量の算出方法は以下のとおり。
電車通勤:旅客数に旅客移動距離を乗じた旅客キロに排出原単位を乗じて算出 自動車通勤:輸送距離を燃費で除した値に排出原単位を乗じて算出 排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.4 2024年3月」に基づく値を採用 |
今後のGHG排出量削減への計画
現時点では、GHG排出量の長期的な削減計画については検討中であり、今後、基準年を定めた上で、2030年や2050年までの削減目標を確立し、GHG排出量削減の取組みを強化していく方針です。削減案としては、省エネルギー設備への転換のほか、再生可能エネルギーの購入や、CO2クレジットの利用などを考慮しています。また、サステナブル調達の徹底を通じて、Scope3排出量の削減も図っていきたいと考えています。
TCFD提言に基づく情報開示
異常気象による災害の増加・激甚化など、気候変動は事業に大きな影響を与える事象となっています。このため、機関投資家を中心とするステークホルダーは、企業に対して、気候変動に関するリスクと機会を特定し、それらが事業に与える影響を評価した上で、重要なリスクの顕在化を防ぎ、重要な機会を享受するための対応を求めています。当社グループにおいても、長期的な観点から気候変動によるリスク・機会と事業への影響を把握して、負の影響を低減するなどの対応に取り組むことの重要性を強く認識しており、2021年12月にワーキンググループを立ち上げ、TCFD提言*の枠組みに沿ったシナリオ分析を開始しました。以降、気候変動に関するリスク・機会に関して、定性的な評価を経て、複数のシナリオ下での定量的な財務影響の評価まで行っています。今後、具体的な対応策の検討・立案等を進め、取組みの強化と情報開示の充実を図っていきます。
- TCFDとは:G20の要請を受け、2015年12月に金融安定理事会により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のこと。
- TCFD提言とは:TCFDが2017年6月に公表した、企業の財務状況に影響のある気候変動関連情報の推奨開示項目等をまとめた、気候変動要因に関する適切な投資判断のための効率的な情報開示を促す提言のこと。
ガバナンス
当社では、気候変動に関するリスクと機会の特定と対応策、並びに経営戦略への統合方針や財務計画の素案の策定を、TCFD提言への対応のためのワーキンググループが行い、この結果を経営会議で審議・決定し、取締役会で承認する体制を取っています。当該ワーキンググループには、関連主要部署の執行役員及び責任者がメンバーとして加わっており、全社的なリスクマネジメントの一環として取組みを進めています。
戦略
気候変動に関するリスク・機会については、上述のワーキンググループにおいて、「気候シナリオ分析」による検討を進めています。2022年5月期は、気候変動に関するリスク・機会の定性的な評価を行い、キードライバー(当社の事業に大きな影響を与える可能性のある要因)を特定しました。2023年5月期には、それに続くステップとして、「シナリオ群の決定」と「定量的な財務影響の評価」を行いました。詳細は以下のとおりです。
シナリオ群の決定について
- 主要な国際機関(IEA, IPCC等)、環境省、気象庁などの公的機関や、研究所、NGO等が公表している情報に基づいた以下の2つのシナリオを前提に、シナリオ分析を行いました。
- 1.5℃シナリオ
-
脱炭素社会への移行が進み、平均気温の上昇が1.5℃に抑えられる世界観。脱炭素に向けた政府による規制や政策が強化されるとともに、顧客の製品・サービスに対する志向も変化し、企業の気候変動対応が強く求められることから、移行リスクが高まると想定される。一方で、気候変動による自然災害の激甚化や増加は一定程度抑制され、物理的リスクは相対的に低いと推測される。
- 4℃シナリオ
-
脱炭素社会への移行が進まず、平均気温が4℃以上上昇する世界観。気候変動による自然災害の激甚化、海面上昇、異常気象の増加など、物理的リスクが高まると想定される。一方で、政府による規制強化が積極的に導入されないなど、移行リスクは低いと推測される。
- 更に、1.5℃と4℃シナリオに整合する、当社が定性的に重要であると判断した気候関連リスク・機会が顕在化した際の影響を変化させるキードライバー(パラメータ情報など)を公表されている情報から特定しました。
定量的な財務影響の評価
- 上記の2つのシナリオに基づき、当社が定性的に重要と評価した気候関連リスク・機会が当社の事業や財務状況に与える潜在的な財務影響額を定量的に推算しました。その結果は下表のとおりです。
- なお、以下の気候関連リスク・機会は、昨年の定量的な財務影響の評価の結果、事業や財務状況に与える影響が相対的に小さいと判断し、重要な気候関連リスク・機会から除外しています。
- 急性的な物理的リスクのうち、「大雪の激甚化」によるリスク
- 慢性的な物理的リスクとしての「地下水使用量の規制下における冷却水の利用増加」
- 「顧客企業における脱炭素推進に伴う、外注部分の内製化による生産場所の適正化、技術供与による高付加価値化の需要増加」による機会
シナリオ | リスク 区分 |
キードライバー | リスクの内容と潜在的な財務影響額の評価方法 | 潜在的な 財務影響額 |
|
---|---|---|---|---|---|
1.5℃ シナリオ |
移 行 リ ス ク |
政 策 及 び 法 規 制 |
炭素税率の上昇 |
|
約6~8億円 |
炭素税の転嫁による 原材料価格の上昇 |
|
約9~13億円 | |||
GHG排出規制の強化 (特に中国政府に よる強い政策) |
|
約87~131億円 | |||
技 術 |
顧客の低炭素素材 への切り替え推進 |
|
約3~5億円 | ||
市 場 |
石油由来の原材料 価格の高騰 |
|
約0.8~1.2億円 | ||
4℃ シナリオ |
物 理 的 リ ス ク |
急 性 的 |
洪水の激甚化、 台風の激甚化 |
|
約52~78億円 |
リスク管理、指標と目標
上記により、事業に与える影響が重要であると特定された気候関連リスクについては、優先順位を考慮の上、その影響を顕在化させないための対応策を検討・立案し、当社グループの経営戦略に反映していく方針です。
当社グループでは、GHG排出量の削減目標の設定に際し、Scope1、Scope2及びScope3をモニタリング指標として採用し、毎年の実績をCSR報告書等で開示しています。
今後は、長期的なGHG削減目標の設定も行い、単年度ごとに進捗状況の評価を行っていく方針です。併せて、Scope3排出量の算出強化も行っていきます。
水資源に関する管理活動の推進
今後、事業拡大を図っていく中で、国内外の生産拡大に排水処理能力の増強が追い付かず、水質汚染が発生するリスクや、国内外の生産拠点で取水制限等による水不足が発生し生産計画が遅延するリスクなどが想定されます。こうしたリスクを低減するため、取水量の削減や排水の水質管理強化を図っていくことが必要であると考えています。2024年5月期の主な取組み内容は以下のとおりです。
取水量の削減
(1) 地下水取水量の集計精度向上(実測集計対象範囲の拡大)
従来は、当社で使用する地下水のうち、「融雪用」の井戸ポンプには流量計を設置しておらず、電力使用量から地下水取水量を推計していました。集計精度向上を図るため、2021年12月以降、順次流量計を設置し、実測値を集計できるようにしており、2023年5月に全ての設置が完了しました。
(2) 取水量削減策の実施・計画
地下水取水量の削減策として、以下のとおり「地下水の循環利用」を計画し進めています。
① 当社の第六製剤棟、第五製剤棟において、空調機の冷却(予冷)に用いた地下水を地下水ピットに戻して再利用することにより、使用量の削減を図っています。2024年5月期の地下水使用量の削減実績は、以下のとおりでした。
第六製剤棟:約20,000m3/年
第五製剤棟:約10,000m3/年
② 当社の原薬製造部においては、生産設備の冷却水として使用している地下水の再利用方法を検討、または一部実施しており、今後の更なる使用量削減に向けて、検討を継続していきます。
③ 上記のほか、当社の排水処理施設では、2024年6月より、液中膜による膜分離と生物処理を組み合わせた排水処理(膜分離活性汚泥法)を導入しています。これにより、排水基準を満たす処理水を安定的に得られるだけでなく、窒素やリンなどの栄養塩類も除去し中水として再利用することによって、排水処理施設での地下水使用量の削減(約10,000m3/年)が見込まれます。
取水量の推移(千m3)
集計概要
- 算定基準:
上水取水量:上水(市水)の購入量地下水取水量:集計範囲組織での地下水揚水量(2021年5月期より融雪用地下水を含む) - 集計範囲:
グラフの項目名に「(単体)」の表記があるものはダイト単体。「(連結)」の表記があるものはダイト単体と連結子会社の合計。 - 集計期間:4月~3月
排水水質管理
(1) 水質規制違反件数
当社の2024年5月期の水質規制違反件数は0件でした。今後も違反のないよう、水質管理の強化に努めてまいります。
(2) 水質に関する取組み実績(2024年5月期)
当社工場では、水質汚濁防止法と富山県の条例で定められた排出基準を遵守しています。各製造現場では、排水処理設備の安定的な運転に努め、設備の改善検討や水質監視機器の更新を随時実施するとともに、日常的なパトロールと排水pHの連続監視を行い、環境負荷が大きくならないように維持管理を図っています。また、工業用水として地下水を揚水して使用しているため、地下水の採取に関する富山県の条例に従い、採取量の管理を適切に行っています。
(3) 遠隔監視システムの導入
当社では、法令や条例に基づき、必要なパラメータについて必要な頻度で排水の水質監視を行っています。2024年6月からは、遠隔監視システム(排水処理施設の24時間自動監視装置)を導入し、pH、ORP、濁度等に異常が検出された場合は、迅速に対応できる体制を整えています。