品質への取り組み

医薬品に対する製造管理・品質管理の強化の取組みについて

昨今のジェネリック業界における品質に係る問題に対して、当社グループで進めている製造管理・品質管理強化策には、「品質保証体制の構築」と「体制の基盤となる品質最優先の企業文化(クオリティ・カルチャー)の醸成」の2本の柱があり、相互に活動を補完し合いながら強固な体制作りを目指しています。

品質保証体制の構築
  1. 「異なる原料の混入」を確実に防止する仕組み
  2. 故意による不正や不注意による誤りを防止する仕組み
  3. 経営陣の品質に対する管理監督/お取引先との連絡体制
  4. 国際的な製造管理・品質管理基準の導入
  5. 当社グループの製造管理・品質管理の強化(一元化)

人財への取り組み

人材育成

今後において中期経営計画の各施策を遂行していく中で、人材育成や従業員の能力開発を適切に行い、一人ひとりの持てる能力を最大限に発揮させ、事業の発展と働きがいの向上に繋げていくことが大切であると考えています。
そのための1つの活動として各種研修を開催し、能力開発の機会を積極的に提供することが重要であると考えています。

(1) 新たな人事制度の構築と運用開始

2020年6月より、人事制度の再構築を進めてきました。従来の制度からの主な改訂点は、「人事フレームの変更(等級などの見直し)」、「評価項目の新設(コンピテンシー評価の導入)」、「昇格基準の明確化」などです。
社内各部門へのヒアリングを行いながら検討・調整を進めてきた結果、内容が確定し、2023年6月より、新たな人事制度の本格運用が開始しました。今後、この人事制度のもとで、職能要件を踏まえた研修・教育を実施し、人材育成の強化を図っていく方針です。

(2) キャリアパスプログラムの導入

2024年7月より、キャリアパスプログラムとして、「社内公募制度」及び「セコンドメント制度」を導入しており、今後、人材交流の活性化を図りながら、従業員のキャリア形成、能力向上を支援していきます。

(3) 現状の全社的な研修体系

現状の研修体系では、全社レベルで管理している研修は「階層別研修」のみであり、下記に示す図のとおり、階層ごとに、テーマ・目的を設けて実施しています。
(ダイバーシティ研修及び中途入社研修は、階層横断型のものとなります。)

新入社員研修(2024年4月)
新入社員研修(2024年4月)

(4) 今後の課題認識

  • 階層別研修については、今後、研修内容の充実を図っていく方針です。
  • 職種別研修については、各部署でOJT教育などを実施していますが、今後、全社的な研修ツールを導入し、eラーニング教育などの充実を図っていく予定です。

階層別研修 テーマ・目的

階層別研修 テーマ・目的
  • ダイバーシティ研修は、主として中堅社員層(主任~課長代理)を対象に、ダイバーシティ推進のための環境づくりを目的として実施しています。
  • 中途入社研修は、直近1年間で入社した中途の正社員(契約社員から正社員登用になった人も含む)を対象に、ダイトの正社員として、社是、経営理念、人事制度、コンピテンシーや求められる役割を理解する目的で実施しています。

働き方改革

ワーク・ライフ・バランスの向上

当社では長時間労働の削減や、仕事と育児・介護の両立支援などを行い、従業員のワーク・ライフ・バランスを向上させることにより、働きやすい職場環境づくりに努めています。具体的な取組み内容は以下のとおりです。

①仕事と「育児・介護」の両立支援

休業制度:

  • 育児休暇、介護休暇、子の看護休暇を設けています。
  • 介護休暇と子の看護休暇は、1日単位・半日単位・1時間単位のいずれかから選択して取得可能です。
  • 子の看護休暇については、ダイトでは法令より長い適用期間を設けています。
    (法令)
    小学校入学まで、子が1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日
    (ダイト)
    小学校卒業まで、子が1人の場合は年間6日、2人以上の場合は年間12日
  • 2022年4月より、育児・介護休業法の改正が段階的に施行されており、2022年10月からは「産後パパ育休」の制度も開始されています。当社でも育児休業を取得しやすい雇用・職場環境の整備を推進し、女性従業員の出産・育児による離職の防止や、男性従業員の育児休業の取得促進を図っています。

時短勤務制度:

  • 育児、介護それぞれにおいて、時短勤務制度を設けています。
  • 育児の時短勤務制度については、ダイトでは法令より長い適用期間を設けています。
    (法令):3歳まで ⇒(ダイト):小学校3年生の始期に達するまで

②その他の取組み

  • 有給休暇の取得促進
  • コロナ禍等を考慮した在宅勤務の支援

ダイバーシティ(多様性)の推進

市場のニーズや人々のライフスタイルが多様化する環境の中で、引き続き事業を拡大し企業価値の向上を図るには、組織内でのダイバーシティの推進が不可欠であると考えています。当社グループでは下記の取組みにより、異なる背景を持つ社員一人ひとりが働きやすく、その能力を発揮できる職場づくりを推進しています。

①女性活躍の推進

  • 管理職に占める女性社員の比率:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行を受け、当社では右記の目標を掲げ、「女性管理職の登用推進」と「女性社員の活躍支援」を図っています。2024年5月末の女性管理職の比率は12.0%でした。
目 標
  • 女性社員を対象とした管理職(課長職以上)育成キャリア研修を通じて、管理職に占める女性社員の比率を20%にする。(2026年4月末まで)

  • 男女の賃金の差異:2024年5月期における「労働者の男女の賃金の差異」は下表のとおりでした。今後、差異の縮小に努めていく方針です。

労働者の男女の賃金の差異(%)※1,2

全労働者 正規雇用労働者 パート・有期労働者
ダイト 79.4 80.8 81.5
大和薬品工業 75.6 73.4 58.5
  • (注)※1男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しています。
  • ※2「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

②障がい者雇用の促進

障がい者の特性や適性を活かすことを考慮しながら、法定雇用率(2.5%)の達成を目指しています。2024年5月期は、従来からの情報収集に加え、品質管理部門にて障がい者1名のトライアル雇用を行ったほか、富山障がい者職業センターからの依頼により、ジョブコーチ3名を招いての事業所実習も行っています。2024年5月末の障がい者雇用率は1.78%でした。

③高齢者就業の促進

改正高年齢者雇用安定法の施行も踏まえ、2021年5月期より、60歳から65歳への定年延長を行っています。また、継続雇用を希望する社員を対象に、70歳までの再雇用を行っています。(2023年4月より、再雇用期間の限度年齢を68歳から70歳へ延長しました。)2024年5月期は2名の希望者が継続雇用となりました。

④ダイバーシティ研修の実施

2024年8月に有識者を講師に招き、「ダイバーシティ研修」を実施しました。

本研修は、入社15年目の社員(男性、女性の混合)を対象として、ダイバーシティの理解促進と、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)への気づきを目的として実施され、講師からの講義に加え、女性活躍に対する自分自身や周りのバイアスについてのグループディスカッションも行われました。

今後もこうした研修を継続し、ダイバーシティを尊重する組織風土の醸成を図っていきます。

ダイバーシティ研修
ダイバーシティ研修

健康経営の推進

健康経営とは、企業が従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。当社では、従業員が心身ともに健康に働けるよう環境を整備することにより、生産性の向上、離職率の低下、企業イメージの向上といった効果も得られるとの考えに立ち、数年前より健康経営に取り組んでいます。主な取組み内容は、下記のとおりです。

①体のケア

  • 健康診断の受診義務化:全社員の健康状態を定期的に確認し健康を維持した労働を確保するため、年1回の健康診断の受診を義務化しています。2024年5月期の受診率は99.0%でした。(休職者を除いた場合は、受診率は100%です。)
  • 健康診断の結果、再検査が必要になった社員には、人事総務部から受診を促しています。
  • 残業時間が月80時間を超えた社員には、一定期間内に産業医との面談を実施することを義務付けています。
  • 毎朝の始業時に、全社でラジオ体操を行っています。

②心のケア

  • メンタルヘルス窓口の設置:総務人事部が窓口となり対応しています。
  • カウンセラーの設置:2020年12月より専門の産業カウンセラーを設置し、月1回当社内の保健室にてカウンセリングを受け付けています。事前申し込みにより、社員の誰もが利用可能です。
  • ストレスチェック診断の実施:メンタルヘルス不調の予防、早期発見を目的に年1回、全社員を対象としたストレスチェック診断を実施しています。2024年5月期の受検率は88.0%でした。未受検の社員への受検勧奨も継続的に実施します。
  • 復職支援センターの活用:メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰を支援するため、富山障害者職業センターによる「復職支援プログラム」を活用しています。

③健康企業宣言の取組み

  • 2020年4月に、協会けんぽが主催する「健康企業宣言」における「Step1 認定証」を取得し、2023年4月に更新しました。
認定証

健康企業宣言とは:

企業全体で健康づくりに取り組むことを宣言し、一定の成果を上げた場合は健康優良企業として認定される制度です。Step1(銀の認定)とStep2(金の認定)の2段階があります。

今後は「Step2 認定証」の取得を目指し、次のような事項を改善課題として取り組みます。

  • 増築した建屋を含め、社内適所への健康測定機器の設置(AEDは設置完了)
  • より機能的なメンタルヘルス推進委員会の構築
  • 健康企業を志向したPDCAサイクルの確立
  • 健診結果に応じたタイムリーなフォロー(検査受診の推奨など)

社会への取り組み

国内医薬品市場の現状

認識

(1)ジェネリック医薬品の使用促進:

近年、医療費の適正化に向けて、政府によるジェネリック医薬品の使用促進策が実施されています。数量シェアの目標であった80%は概ね達成されていますが、新たに「後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」及び「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」との目標が示されているため、引き続きジェネリック医薬品市場の緩やかな拡大が見込まれます。

(2)毎年薬価改定の実施:

医薬品の薬価改定は、従来2年に1回実施されていましたが、市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するという目的で、2021年度以降、毎年薬価改定が実施されています。これに加え、昨今の急激な原材料価格の高騰や為替変動は、各社の製造コストに多大な影響を与えています。特例的な措置として、原材料費高騰により不採算となった品目に対する薬価引き上げも行われていますが、医薬品業界では依然として厳しい収益環境が続くことが見込まれます。

(3)医薬品の安定供給確保への対応:

2020年末以降、ジェネリック各社の品質不正問題を起因として、多くの品目で供給停止や出荷制限が生じたことにより、医薬品の供給不足が続いています。このため、厚生労働省からは、医薬品の安定供給の確保に向けた協力要請とともに、供給状況の調査・公表も行われています。更に2024年度の薬価制度改革では、後発医薬品に関して、安定供給に貢献する企業を薬価設定において優遇する仕組みも導入されています。こうした状況下で、各社にとって、確かな品質の医薬品を安定的に供給することが喫緊の課題となっています。

(4)長期収載品の選定療養制度の導入:

2024年10月より、長期収載品の選定療養(長期収載品と後発医薬品との差額の一部を選定療養費として患者が自己負担する制度)が導入されています。これにより、対象となる長期収載品からジェネリック医薬品への置き換えが促進され、ジェネリック医薬品の使用率が高まることが見込まれます。

取組み

当社では、様々なお取引先のニーズに対応し、医薬品の安定供給を確保するため、生産能力増強投資を継続しています。

昨今の主要な設備投資として、原薬では2022年5月に「第七原薬棟」が竣工し、2023年1月から商用生産を開始しています。

製剤では、需要増加や受託案件の増加を踏まえ、2023年12月に「第十製剤棟」が竣工し、2024年8月から商用生産を開始しています。今後、稼働率を向上させ、安定供給への更なる貢献を図っていきます。

原薬・製剤ともに、グループ各社との連携強化による生産体制最適化への取組みを継続し、製造コストの低減と安定供給の確保を図るとともに、グループ全体としても一層の経営効率化に努めています。

品質確保に関しては、品質最優先の企業風土のもと、日々の生産における製造管理・品質管理を徹底するとともに、見直すべき点があれば積極的に改善を進め、管理の強化を図っています。

また、将来を見据えた研究開発の強化も推進しており、2024年3月に「総合研究センター」を新設しました。同センターでは、要求される品質水準の上昇に伴う分析機器の多様化・台数増加等への対応や、研究開発活動の効率化が図られており、今後更に、新技術・新分野への取組みにも注力していく方針です。

第十製剤棟
第十製剤棟
総合研究センター
総合研究センター

人権の尊重

認識

近年、人権を尊重した企業活動に対する国際社会の期待や関心が高まっており、企業にとって、バリューチェーン全体を通じて人権尊重の責任を果たしていくことが、ますます重要になってきています。

取組み

国際社会からの要求事項等も踏まえ、人権の尊重に関する方針を策定しています。引き続き、社内外への方針の周知と取組みの強化を行いながら、当社グループの事業に関わる様々なステークホルダーの皆さまに対して、人権尊重の責任を果たしていく方針です。

気候変動への対応

認識

気候変動への対策として、世界的に脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しており、日本においても、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、温室効果ガス(GHG)を排出しないクリーンエネルギー中心の産業構造・社会構造への転換を図る動きが強まっています。

取組み

GHG排出量削減策の一環として、環境に配慮した設備・建物の導入や、太陽光パネルの設置などを進めています。また、長期的な観点からは、気候変動がビジネスに与える影響を分析しており、今後の経営戦略に反映していきます。

持続可能なサプライチェーンの構築

認識

社会の持続的な発展を目指す中で、企業自らが人権侵害や環境問題を引き起こさないことに加え、調達先に対しても働きかけを行い、サプライチェーン全体を通じて、各企業が社会的責任を果たす取組みを強化していくことが強く期待されています。

取組み

今後、調達先の拡大や様々な外部環境の変化が見込まれる中で、サステナブル調達の取組み推進により、社会面・環境面への配慮を強化し、サプライチェーンにおける持続可能な調達の実現に努めていく方針です。